022844 ランダム
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アムステルダムコーヒーショップ

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覆面ライダー(創作)

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「うわぁぁ。不可思議生命体だあっ。逃げろおっ!」
「グオォォォ~~ッッ」
「きゃーっ!」
「さっ!さゆり!さゆりーっ!!」


キイィィ―――ッ

「ああっ、貴方は!新聞で見ましたよ。不可思議生命体を倒してくれる正義のヒーロー覆面ライダー!」
「よいしよっと。」
「ライダー。む、娘が怪物の手に!は、早く助けて下さいっ!」
「まぁまぁ落ち着いて下さいな。事情はよくわかりましたわ。で、今から私は命張って戦ってきますけども、お嬢さんの救出に御主人、ナンボ出せます?」
「へ?」
「いや、ですから、へ?じゃなくて、実際私もこの戦いで死ぬかもしれんのですわ。イタイ思いもせなアカンし。で、無事助けだしたら正味(しょうみ)ナンボまでだせます?」
「きっ、君は正義の味方だろう。みんなの笑顔の為に戦ってくれるんじゃないのかねっ!」
「御主人。みんなの笑顔だけじゃ腹は膨れんのですわ」
「ウダウダ言ってないで早く娘をっ!」
「大丈夫ですがな。アイツはエモノを10分間観察した後、頭から食べるんですわ。その間はお嬢さんも家におるより安全ですわ。」
「そんな事わからんじゃないか。早く頼むっ!」
「そないに頭下げられても困るんですわ。まぁ聞いて下さいな御主人。私、たまたま、古代遺蹟の辺りを散歩してましたら偶然このベルトを見つけまして、シャレで付けてみたら身体の中に入ってもうて取れませんがな。それで同じ頃、不可思議生命体が人々を襲うようになってきて、闘ってみたら勝てますやん。そうなったら警察も遠慮なしですわ。子供の夜泣がやっと治まって眠れる思うたら夜中、急に呼び出されてとか、自然会社も遅刻や早退や欠勤が多くなってきまして、ある日上司に呼ばれましたがな。こっちもベルトが入ってとか会社に説明したんですがね。上司の言うことが、これまたエエですがな。「君にはもっと相応しい場所があるんじゃないのかね?」と、アッサリしたもんですわ。15年も勤めたのに最後は冷たいもんですわ。ちうわけで私今無職になりますねん。家のローンがあと20年から残ってますし…」
「きっ、君には倫理観というものがないのかね!」
「ありまんがな。この力を使って金庫の壁をブチ破って強盗したりとかしてまへんがな。真っ当に生きてます。でもね、怪人と命懸けで闘ってですよ?家に帰ったらまだ寒いのにストーブに入れる灯油すら買えませんがな。どないして生活しよう思うたら、こないするしかないでしょう。こっちの事情もわかってくれはるでしょう?それに闘うと結構イタイんですわ。腰とか背中とか。でも頑張って倒してきますんで、ぶっちゃけナンボ出します?」
「じ、じゃあ10万出そうじゃないか。」
「10万!?それ娘さん年頃になったら泣きまっせ。グレるかもしれまへんで。いくらなんでも命が10万っちゅうことはないでしょう。」
「わ、わかった。30万出すから早くっ!」
「夏のボーナス一括払いと違うんですから御主人。娘さんは液晶大型テレビとかと一緒の値打ちでっか?家の貯蓄で考えるから話が変なことになるんですわ。近頃はホラ、はじめてのナントカやら、黄色い看板やら、ほのぼのするやつとか、色々便利になってますやん御主人。奥さんと結婚した時も結納で100万位包みはったんでっしゃろ?」
「わ、わかったから。時間がないっ。300万円出すから早く頼むっ。」
「300万円ですね。わかりました。こっちも命懸けて闘いますわ。お支払い方法は一括、またはリボ払いもOKです。分割手数料はジャパネットが負担!」
「アンタ何言うとるんですか」
「じゃあ免許証のコピー取りますんでチョット拝借」
「バイクの後ろの機械はコピー機かいっ!」
「あとこの誓約書に拇印だけ押しといて下さいな。」
「そ、そないな事までせなアカンのですか?」
「前にね?無事救出してきたのに、子供手元に戻ってきたらガラッと人が変わりよってね「そんな大金出す筋合いはない。出るとこに出てもエエ」と、こうですわ。私もライダーですし、家庭裁判所は具合悪いですし、ライダーやり始めの頃はよく泣き寝入りしてましたわ。ですから私と貴方の契約っちゅう事で。ここに朱肉ありますさかいどうぞ。」
「必ず助けて下さいよ」
「当たり前ですがな。あっ、このポケットティッシュで指を拭いといて下さい。残りはサービスしときますわ。」
「……。」
「じゃあ私は怪人と揉み合って、どっか遠くの安全な場所で闘ってきますさかい。また後日お伺いしますんで。ウォリャーーッ!!」




「…で、ダンナどないでした?」
「それが予想は200万やったんやけど、300万出すって言うてくれてなぁ。チョットびっくりしたわ。そっちの取り分100万でエエやろ?」
「充分ですわ。次も頼みますわ。」
「貰うたら3日以内にそっちの口座に振り込むさかい。あっ、振込み手数料はそっちで持ってくれはる?」
「当然ですがな。ホンマ頼りはダンナだけですわ。見捨てんといて下さいよ。ダンナに会う前の私言うたら、自分の意見とは関係なくイキナリこの姿になってしまうから、バイト先にもおれん様になってきて、引き籠もってましたんや。それで人生ヤケになって暴れてたらダンナからのお誘いでしょ?あの時ダンナに会うてなかったら、今頃どうなってたか…」
「こっちも自分との出会いは渡りに船やったがな。今迄会った奴らは交渉してみても『俺は神だ』とか『世界を支配する』みたいな訳わからん奴ばっかりでまぁそういうトチ狂った奴らは全員俺のドリルスパークキックでブチ殺してきたけどな。ワシそういうとこ正義感強いねん(笑)」
「ダンナのそういう所にこっちも感動してまうんですわ。それにしても見事ですわ。子供を頭から食べる、とか、観察してから食べるとか、10分っちゅうのが絶妙ですわ。最初台本聞いた時はビックリしましたわ。」
「親に考える余地を与えるのがポイントや。」
「子供なんかよう食べませんわ。ミートスパゲッティーとか好物ですし(笑)それでもダンナ、守って下さいよ。他の奴らは強くなってますけど、私の場合はこの姿と、ジャンプ力と糸吐くこと以外人間と一緒ですから、警察にライフルとか射たれたら一発で死んでしまいますわ」
「わかってるがな。揉み合いながら背中で全部弾受けたるさかい。くれぐれも自分を大事にしてや。」
「ホンマ収入源はダンナしかいないんですわ。これからも末長うたのんますわ。」
「こっちかて家のローンあと20年以上あるさかいな。持ちつ持たれつやがな」
「羨ましいなぁ。豪邸建てはって」
「何をおっしゃりますがな。ささやかなウサギ小屋ですわ。今は金利だけ払ってるようなモンですわ。」


ウ~~ウ~~

「あっ、五条刑事が来たわ!次の予定は携帯に連絡するさかいとりあえず逃げてくれっ。 またエエ仕事してや。」
「電話待ってますわ。」

「おぉ~~い。ライダーッ!」大丈夫かぁ――っ!!?」



             終




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